ドーヴァー海峡を突き進む『六王権』軍。

その先頭を突き進むのは奇怪な列車、いや、船と呼んだ方が良いのだろうか?

その群れが死者船とは比較にならない速度で突き進む。

上から見れば長方形状のそれに死者がまさしく鮨詰め状態で満載されていた。

これこそヴァン・フェムの新生七大魔城の一つ、強欲魔城『マモン』。

攻撃能力を完全に廃し、死者の輸送能力のみを特化させた魔城。

『ベルゼブブ』より一回り小さいが、『マモン』一機に死者を人として見れば千、物として扱えば三千乗せる事が出来る。

またホバークラフトの要領で気流操作の魔術を持って浮上させ、それを持って陸路も海路関係なく死者が歩くより遥かに早い速度で移動が出来る。

また、その輸送能力を『六王権』より認められ、七大魔城の中で唯一量産が許され、アトラス攻略軍に百、イスタンブール侵攻にも百、そしてロンドン侵攻軍には実に三百の『マモン』がこの作戦に合わせての実戦配備され、『六王権』軍に今までなかった高速かつ大量の死者の輸送が可能となり、終戦まで頭を悩ませる存在となったのであった。

だが、無論だがルヴァレ軍を撃退した後、ドーヴァー周辺の防衛再建を努めていたイギリス軍、及び魔術教会も黙っている訳が無く、砲撃やミサイル、更には攻撃機による迎撃を開始する。

密集している為に、ろくに標準を合わせる事も無く次々と命中、爆発や炎上しながら『マモン』は搭乗している死者諸共ドーヴァーの海に沈んでいく。

だが、それも直ぐに強制終了を余儀なくされる。

攻撃機は次々と巨大な手で破壊され陸上の部隊も上空から降り注ぐ岩の雨に退却を余儀なくされた。

その犯人こそロンドン侵攻軍の空の要、傲慢魔城『ルシフェル』。

バルカン半島上空で落とされた暴食魔城『ベルゼブブ』と同じ空中ゴーレムだが、用途が違う。

『ベルゼブブ』を戦闘機と例えるならば、『ルシフェル』は爆撃機。

傲慢の悪魔の名を冠するにふさわしく、上空から地面を這い回る人や建物を遥か上空から見下ろし、見下すが様に、岩や様々な手段を用いて宇宙空間から回収した衛星の残骸を高速で発射する。

『ルシフェル』の猛攻になす術の無いイギリス軍。

こうして『六王権』軍先鋒部隊は再びイギリスの地を踏もうとしていた。

十九『アトラス院攻防戦』

ロンドン侵攻軍がまずは順調に橋頭堡の獲得に成功していた時、アトラス院を攻め立てていたオーテンロッゼ率いる北アフリカ方面軍は苦戦の真っ只中にあった。

「くそっ!まだかまだアトラス院は落ちぬのか!」

陣頭に立ち総指揮を取るオーテンロッゼは苛立ち混じりに罵声を飛ばす。

「このままでは『六師』が到着するぞ!奴らが来てからでは遅すぎる!何としても『六師』が到着する前にアトラスを落とすのだ!」

台詞だけ聞けば地位としては上の『六師』の手をわずわらせる前にアトラス院攻略を完了させたい様にも聞こえる。

だが、その内心は全く違っていた。

十七位『白翼公』トラフィム・オーテンロッゼ。

死徒の王としてふさわしい勢力と実力、更に歴史を兼ね揃えている。

その自負は『六王権』の手で服従を組み込まれた状態で再生されても無くなる事は無かった。

その自負と誇りは時が経つにつれて、『六王権』の隣・・・すなわち最高側近に相応しいのは自分であると言う妄信を抱くようになり、現最高側近である『影』や『六師』を内心で見下す傾向に陥っていた。

奴らは『六王権』の慈悲で側近に取り立てられたに過ぎない、側近衆と呼ばれようと所詮は自分に比べれば下賎の下賎。

だが、今は忌々しい事に奴らの方が『六王権』の信頼は厚い、今は奴らより多くの功績を残すほうが先決。

そうすればいずれ『六王権』も自分の方が最高側近に相応しいと気づく筈だと・・・

その考えの下、オーテンロッゼは海軍及び『マモン』に運ばせた部隊を次々と投入、まずはカイロを完全包囲し逃げ遅れた市民を次々と襲わせる。

無論、中には運よく逃げおおせた市民もいたが、大多数が『六王権』軍の手から逃れる事は出来ず、餌とされるか新たな死者と化した。

その数、死者とされた者だけでも推定二十万以上、死体とされたものも含めれば、四十万に届く量。

すなわちオーテンロッゼの部隊は、攻撃を開始時の部隊の倍以上の兵力を確保した事になる。

これだけであれば賞賛されるに相応しい功績であった。

事実、その報告を受けた時『六師』や『影』は無論の事、『六王権』も驚きを浮かべながらも、その功績を率直に称えていた。

この時期、これだけ大量の死者を得るのは極めて厳しい状況と化しているのだから当たり前と言えば当たり前である。

だが、塞翁が馬とはよく言ったものである、三十万の軍に気を良くしたオーテンロッゼはそのまま全軍を率いてアトラス院への攻撃を開始してしまった。

軍勢を大幅に増やし更にアトラス院陥落の功績を上積みする為に。

しかし、これが仇となった、アトラス院は防衛指揮官の元、アトラスの防衛戦力を最大限活用し徹底抗戦。

オーテンロッゼの軍はアトラス院内部に雪崩れ込む所か、アトラス山に存在するアトラス院の入り口、通称『アトラスの門』にも辿り着けない有様だった。









現在のアトラス院防衛指揮官は先にも話したようにシオンの父であるナジャフ・エルトナム。

エルトナムである彼がアトラス院の防衛司令官になれたのには理由があった。

時間を『六王権』軍の攻撃開始直後まで遡る。

志貴達と同じ様に一週間は時間の余裕があるだろうと踏んでいたアトラス院は大揺れに揺れた。

その中で院長は動揺も少なく、幹部を叱咤激励し平静を取り戻させると、緊急会議を開いた。

最も決まった事はと言えば、アトラス院の徹底防衛程度で、後は揉めに揉めた。

誰を指揮官にすえるのか、防衛に残す戦力はどうするのか、そしてアトラスに封印している兵器の数々はどうするのか。

議論は喧々囂々白熱はしていたが重要な箇所は何一つ決まらない。

(何たる事よ・・・)

その議論を眺めていた院長は嘆息した。

彼らの考えは読めていた。

アトラス院を守らなければならないが、この現状で残ればきわめて高い確率で戦死するのが目に見えている。

誰かが残らなければならない、だがそれに自分がなるのは真っ平だ。

誰かにその責任を押し付けようと四苦八苦しているに過ぎない。

『六王権』軍がいつ来るとも知れぬと言うのに何たるざまか。

あまりにも無様な醜態に声を荒げようとした時、

「失礼する」

そう言って入ってきたのはナジャフ。

「!!何をしに来た!」

アトラス院のメンバーでない彼の登場に糾弾と罵声が上がるがそれも直ぐに静まり返る。

「アトラス院防衛の指揮官だが、私に任せてはもらえないだろうか」

『!!』

その言葉に一同驚愕する。

だが、直ぐに一部から笑みが浮かぶ。

「そ、そうか、私が残ろうかと思っていたが、志願者がいるのならば彼に任せるべきだろう」

「そうだな。いやはや残念、私の武勇存分にお見せしようか思ったが」

「全く全く、ははは」

そうしてなし崩しにナジャフの防衛指揮官の就任は承認されたのだった。









「・・・どう言う事だ?ナジャフ」

会議も終わり退却、いや言葉を飾らなければ逃走を図る為各々が飛び出し、がらんとした会議室に院長の声が響く。

「どう言う事も何も言ったままだ」

「お前だって判っているだろう!今残ってもアトラスが長時間持ち応えられる保証は無いのだぞ!」

アトラス院生時代から主席を争い、公はともかく、私では長年親友であり続けた院長が声を荒げる。

「だが、ここで誰かが名乗らなければなし崩しにアトラスは『六王権』の蹂躙を受け、その後は中東、アジアがその脅威にさらされる。それにいざとなればお前が残る腹積もりだっただろ?」

「・・・」

沈黙は消極的な肯定を意味していた。

「お前にはただでさえアトラスの重荷を背負わせてしまった。ならば」

「それはお前がエルトナムだからだったからに過ぎん。それゆえ先代から疎まれ、お前はアトラス院の重鎮にもなれず、あまつさえ、些細な事を大きく悪し様に叩かれ院を追放された。お前に何の責も無い」

「・・・そうかも知れんな。だが、そうだとしても俺にはお前に借りがある。娘をアトラスに迎え入れてくれたと言う大きな借りが」

「それは、お前の娘がそれに相応しい才覚の持ち主だったから」

「そうだとしてもお前がシオンをアトラスに迎えてくれたから、シオンは幸福な結婚を送る事が出来た」

シオンがアトラスに入らなければ、あの日シオンは志貴と出会う事は無く、今日のシオンは存在する事はなかった。

「元気なのかシオンは?」

「ああ、初孫はまだまだ先・・・と言うか見れそうにないが」

「・・・ナジャフ、やはりお前は」

「失礼します!」

会話を遮る様に、一人の錬金術師が入室してくる。

「院長、脱出準備整いました。お急ぎを」

「・・・」

第三者が現れた為に、私的な口調から公的な話し方に切り替える。

「院長、それでアトラスの兵器の使用ですが・・・」

「最小出力の制限付きだが使用を認める」

「ありがとうございます。あと私以外の戦力は」

「志願してきた錬金術師達が既に集まっています。それよりも院長お急ぎを」

「・・・判った。ナジャフ・エルトナム、武運を」

「はっ」

そして通り過ぎる刹那に

「すまん、わが友よ」

「さらばだ・・・わが友よ」

小声でそう話し合い二人は今生の別れを済ませた。









ナジャフは早速防衛兵器の数々の起動を開始する。

そんな彼に付き従うのは彼が短いアトラスの教官時代に彼の教えを受けた教え子達。

錬金術師としても教官としても優秀であったナジャフの教えに感銘を受け、彼がアトラスを追放されてからも密かに彼の教えを受けてきた者達だった。

それが公になって、エルトナム派とみなされたが故に、主流から程遠い扱いで冷遇され続けてきたが錬金術師としては皆一流の腕を誇る。

「教官、全防衛兵器起動致しました」

「教官、こちらも全ての封印兵器、武器防具の解除終わりました」

「ああ、ご苦労様、全員を呼んでくれ。訓示と言う訳ではないが、作戦の基本方針の確認とそれが終わったら、ささやかであるが再会の宴でも開こう」

「はい」

基本方針といっても難しい事は何も無い。

このアトラスを援軍(来るかどうかはきわめて怪しいが)招来まで防衛する事。

アトラス内部に敵を一体たりとも入り込ませない事。

この二点だけであった。

何故か?

アトラスの外部は既に歴代の錬金術師達が世界の崩壊を防ぐ為に作り上げながら、一度たりとも陽の目を見る事の無かった兵器群がずらりと揃えられている。

だが、内部はと言えば入り組んだ迷宮だと言う事以外は、さして突出する機能はない。

無論この防衛戦にあたって、トラップを仕込んではいる。

一流の錬金術師達がその分割思考を駆使して編み出し巧妙に隠蔽を施したが、所詮付け焼刃。

外部に揃えた防衛機能に比べればお粗末と言わざるを得ない。

何より彼らは代行者や執行者のような戦闘のプロでもない。

攻め込まれればそれで全て終わりである。

教え子達から兵器群の展開模様、更に食料や水の備蓄の確認をとりながら食堂に向かうと、そこには既に料理が所狭しと用意されていた。

「??何だこれは」

「ああ、それでしたら教官の奥様が」

「な!」

「皆様戻られましたね。どうぞお口に合うか判りませんが」

そう言って現れたのはナジャフの妻であり、シオンの母、ナターシャ。

「お前!どうしたんだ!」

「どうしたとはご挨拶ですわねあなた。私も錬金術師の助手として育てられた身です。ここの防衛戦の助力に」

「助力にって・・・ここにいると言うのは死ぬ可能性のほうが高い事を意味しているのだぞ!それをお前は」

「もちろん全て承知の上です。あなたまさかお忘れですか?実家の反対を押し切り結婚した時の誓いを」

無論忘れていない。

『共に生き、そして共に死のう』

この短い誓いに込めた万感の想いと共に彼らは生きてきた。

「だが、シオンは」

「大丈夫ですわ。シオンはすばらしい婿様を得たではありませんか」

「いやそうではなくて」

「それに私はここで死ぬ気など毛頭ございません。あなたと一緒にこの死地を脱し、私達の初孫を見なければ死ぬに死ねません」

「・・・しかしだな」

「それに、誰がお食事の準備とかなさるのですか?」

戦いとは無縁の一言で全てが決した。

それにナジャフ自身説得は通じないだろうと途中から諦めてもいた。

妻の頑固さは最も身近にいた彼が良く知っている。

それに錬金術師の助手としても妻が極めて優秀だと言う事も知っていた。

最後にはため息一つついて、妻の参戦を認めたのだった。









翌日・・・太陽は昇ってもそれを見る事は出来ないが・・・カイロは既に完全包囲され、包囲からあふれる様に『六王権』軍がこちらに向かっているとの報告があがった。

おそらくカイロ市民を死者に仕立て上げ、その勢いのままこちらに突っ込んでくるのだろう。

「ついに来るか・・・総員戦闘準備、『アトラスの門』を閉鎖、防衛兵器起動、基本方針通り敵を一体たりとも『アトラスの門』をくぐらすな」

ナジャフの号令の元『アトラスの門』は複合装甲に強化魔術、更には教会の祝福の祝詞まで込められた特注の扉によって封印される。

これでアトラス院は封印され、これが次に開くのは『六王権』軍の攻撃を耐え抜き敵が撤退した時か、『六王権』軍によって破壊された時だけである。

戦闘準備が全て完了すると同時に、赤外線モードでの索敵で『六王権』軍の接近を確認され、防衛兵器が次々と動き出す。

ここに『アトラス院攻防戦』は本格的な交戦を開始したのだった。









未だに落ちぬアトラス院を前に被害報告を聞いたオーテンロッゼは激高する以前に顔面を蒼白にさせた。

アトラス院を攻撃してわずか半日あまりで三十万いた軍勢は既に十万強程度。

カイロを包囲し手に入れた兵力のほぼ全てを失った形となる。

数の力に酔ったオーテンロッゼが無策な突撃を強行し続けた結果だった。

相手が人間であれば休息の暇を与える事無く攻撃を繰り返す事は決して間違いではない。

しかし相手が悪過ぎた。

『アトラスの門』周辺を守るのは遠隔操作によって操られた機械兵士達。

しかも、教会より供給されたのか、浄化能力を備えた剣や銃で武装し死者などたやすく仕留め、死徒ですら無事ではすまない。

オーテンロッゼの軍はアトラス院に突入する所か『アトラスの門』にも近寄れず、この機械兵士を数対小破させたのがせいぜいの戦果。

しかもそれだけではない。

遠距離からはアトラス院より射出されたレーザーカノンで、敵を一気に灰とし、時々繰り出されるミサイルで粉々に吹き飛ばし、機関砲が片っ端から粉砕する。

応援に駆けつけた空軍の死者ですら、発砲された弾幕、いや弾丸の壁に押し潰され、多数の被害を出している。

無論だが、レーザーカノンを除く全ての装備には浄化の力を付与されている。

いや、付与されていないレーザーカノンも危険と言う他ない。

死者はいざ知らず死徒であれば身体を再生する事も出来るが、再生したとしてもその間は動く事が出来ない。

その隙を突くように機械兵士に切り裂かれ、ミサイルなどが飛んでくればそれによって絶命する。

現にこの戦法でかなりの数の下級死徒が灰と化している。

「く・・・い、一旦下がれ!!戦力を再編する!」

事態がここまでに及びようやくオーテンロッゼも攻撃を一旦中止にせざるを得なくなった。

もうここまでくれば、功績を独占する所か、この損害の責を問われる可能性すらある。

何しろ、現地調達で手に入れた二十万の軍勢を全てアトラス院攻防戦で使い果たした。

おまけにそれに見合う戦果を出したかと問われれば万人がNOを突きつける散々たる結果。

後方、北アフリカ諸国で、死者の補充を行っているとはいえそれも順調ではない。

「まずいぞ・・・これはまずい」

現状新たな死者の確保が難しい以上、このような損害を出してしまえば左遷、いや最悪の場合最終勅命が下る恐れもある。

そんなオーテンロッゼに、後ろから

「おいおい、こりゃひでえな」

「!!」

聞き覚えのある声がかかった。

恐る恐る振り返れば、そこにはいつの間にか『六師』全員が立っていた。

「全く、死者を大幅に増やした事については陛下も率直に絶賛していたのにそれを全部使い果たしたの?」

「そのようだな。おまけにアトラス院は未だに健在か」

「相手が悪すぎたとは思うけど・・・少し欲張り過ぎたんじゃないの?」

「ただ単に相手を甘く見ていただけだよこいつは」

侮蔑と嘆息の声が聞こえるたびにオーテンロッゼは屈辱と怒りに身を震わせる。

「奴の叱責ならば後でも出来よう。それよりもアトラス院をどうするかのほうが先決だ」

無言を貫いていた『地師』の声に全員が頷く。

「オーテンロッゼ、敵の防衛陣は?」

「は、はっ・・・敵は前面に教会の祝福を与えられたと思われる剣や銃で武装した機械兵士を多数配備、更に遠距離からは光線砲やミサイル、機関砲を撃ち込み我々に近寄る余裕を与えません」

「そこまで判っていながら無闇な突撃を繰り返したのか・・・おめでたい男よ。我々が今新たなる死者や死徒の確保にどれだけ四苦八苦しているのか知っているだろうに・・・もう良い。お前は射程範囲外まで軍を下がらせ、部隊を再編させろ。後は俺達で済ませる」

そう言うとオーテンロッゼには眼もくれず犬でも追い払うように手で下がる様に命じる。

「・・・っ!」

あまりの屈辱に眼を大きく見開き、全身を震わせる。

それをちらりと見た『風師』が軽蔑の色も露わにせせら笑う。

「おい見ろよ、状況も見えねえ様な奴でも自尊心だけは一人前以上のようだぜ」

「本当だあはははは!」

その言葉に『光師』も一緒になって嘲笑する。

それを聞きながら忍耐を総動員してその場から立ち去るオーテンロッゼ。

「ふう・・・『風師』、『光師』あんまり刺激しないで。今の所はまだあいつの兵力も必要なのよ。たとえあいつの頭が鳥頭だとしても」

「判っているって。だから本来なら八つ裂きにする所をせせら笑うだけで済ませたじゃねえか」

「でも本当、主と下僕って似るんだね。オーテンロッゼとルヴァレの奴行動原理そっくりだよ」

「更に言えば、その上のお前にも似たのかもな」

「僕あんな単細胞じゃないよ!」

「はいはい、お遊びは終わり!アトラスを落としてから続きをやっていなさい!」

「そうね。早めに終わらせるわよ」

「まだからかい足りねえが、まあしょうがねえ久々の大喧嘩楽しむとするか!」

「・・・ちぇ、終わったらしっかり白黒付けるからね兄ちゃん!」

『闇師』と『水師』の諌めを受けてお互い渋々の内に口論を収めた『風師』、『光師』、そして既に先行してアトラス院に近寄る『炎師』と『地師』。

『六王権』側近衆『六師』が開戦当初以来久しぶりに同一の戦場に揃い、攻撃を開始しようとしていた。

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